「最近、というか昔からよく眠れないんだよねぇ」

今夜も眠れないので夜空を見上げに来たら、ちょうど良く千空くんがいたので強引にひき止めた。
もちろん、安眠の方法とか知らないかな〜という期待を込めてである。
現代であれば、スマホをやめてさっさと寝ろなんて言われていたかもしれない。しかしこの世界にそんな機械は存在しないのだ。

「千空くんはちゃんと寝てる?」

千空くんこそ、寝る間も惜しんで色々と仕事をしていそうだ。

「おー寝てる寝てる、3秒で寝るわ。日中頭動かなきゃ話になんねー。そういう訳だからテメーも早く寝やがれ」
「だからそれができたら苦労しないって!安眠のコツ!コツを教えてください!」
「副交感神経を優位にさせる」
「……ほう??」

なるほど分からん。そのフクコーカン神経とやらは私が頑張ればどうにかなるものなんだろうか。

「アーー、取り敢えず今日はもう戻っとけ。んで何も考えんな。寝よう寝ようっつープレッシャーで眠れなくなったりすんだよ」
「はーい先生、おやすみなさい」

それから彼に言われた通り頭をからっぽにして横になってみたけど、もしかして頭はもともとからっぽなのでは?とか、腰が痛いかもとか、千空くんって寝癖できるのかなとか、結局色んな事を考えている内に朝を迎えてしまった。


「ふああ、おはよー」
「ハヨ」
「これはいったい?」

目の前には、どうせ説明されても分からないような石やら何やらが積み上げられている。

「クク……喜びやがれ。これからお前の睡眠負債を全部返上させる。ちーと荒療治だがなァ」
「つ、つまり……これは……!」
「ああ」

恐る恐る千空くんを見上げると、彼は悪魔みたいな恐ろしい顔で笑っていた。


「疲れ果てるまで働けってことかーッ!!」



2019.12.8


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